「心に留めた風景」14
「白い戦車」
「あー、もう台無しじゃないかっ!戦争遺構にペンキを掛けるなんて・・・」 と、発見時には嘆いたものだったが・・・ 僕はホントよく失敗をする。間違いを犯す。 自分本位の価値観と先入観で現実を見据えるから恥をかく。
南国の美しい島々に今なお点在するおぞましい光景。 太平洋戦争時の人殺し兵器の残骸を、 まだ姿かたちが残っているうちにこの目で見ておきたい。 そして旧日本軍の置き去りにした負の遺産を写真に収めたい。
期せずして、反戦反核を標榜する団体「ピースボート」が、 横浜港から出港するというので、 その初回に乗船させてもらい、南海の島々の戦跡を巡った。 それらは太平洋の島々の青い海と白い砂浜に打ち捨てられ、 時が止まったように空しく哀れなな姿を晒していた。
この戦車は戦後、地元住民によってペンキで塗られたものだろう。 戦時中は家を焼かれ、家族を犠牲にされ、凌辱を受け、 耐え忍び、かろうじて生きながらえた島民達だ。 この残虐行為を、無慈悲な戦禍を有形保存しておくための、 無言の抵抗の意思表示なのかも知れない。 肉体を引きちぎる悍ましい凶器として、未来永劫晒し物にするには、 白いペンキがよく似合う。
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