「心に留めた風景」29
「踊り子」
よくね、若いカメラマンなんかがね、 役者や踊り子やスポーツ選手などの取材時に、 「彼らの日常の素顔や真実の姿を知りたい」なんてのたまって、 楽屋裏やロッカー・ルームに押しかけたりするでしょ。 そして化粧を落とした素顔や、 抜け殻みたいに疲れた選手を撮って我が意を得たり、みたいな顔をしている。 しかし、それでヒューマニズムでも語るつもりか?それは勘違い。 役者は舞台で、スポーツ選手はフィールドで対峙しなければ何の意味も持たない。 彼らがハレの舞台に登場するには何か月も稽古、練習をして、 体調管理して、万全の体制で挑んでいるんだ。 大勢の観客に楽しんで貰えるように、 舞台やステージやグラウンドに命がけで立っているんだよ。 それを休憩時間に盗み撮りするなんて失礼極まりない。 そんなことしても、煙草をくわえた普通のおじちゃんやおばちゃんが写るだけ。 何も見えてこない。もっと彼らの芸や技を尊重しなくちゃ。 モノを伝える表現者として対等に勝負しなくちゃ。 「カンボジア、アプサラス・ダンサー」 |