武蔵野光機:リトレック(RITTRECK) II-Aのレストア

  • 昭和30年初頭に熊本市在住の安武氏と久永氏(ひさなが光機の先代の社長)が試作したプロトタイプ(レンブラント)をベースとして、武蔵野光機が商品化した6x9判一眼レフである。
  • Optikaという名前でずいぶん輸出されたようなのでebayでちょくちょく見かける。
  • 本機はFUJINAR 1:4.5 f=18cm付きのジャンクを2002年3月に15000円で購入したものである。
  • ほぼ同型機であるオプティカIIa、スローガバナ付きのリトレックSPのレストアも参考にして欲しい。
  • 2002年3月11日
  • 2005年3月26日全面改訂

 

  • 現在に至るまで国産唯一の6x9判一眼レフである。専用のロールフィルムホルダを取り付けることで、6x9, 6x7, 6x6, 6x4.5の4種類のフォーマットに対応する。なお、武蔵野光機は現在も(株)ウィスタと名を変えて大判カメラを製造している。
  • 製造元でのメンテナンスはもはや不可能であるが、機械式の一眼レフなので修理を引き受けてくれる会社はあると思う。このカメラに縁のあるひさなが光機様にお願いしてみてはいかがだろうか?←引き受けてくれるか保証はしないけど(笑)
  • マニュアル・チラシなどはここにおいてあるので参考にして欲しい。

 

  • 大判カメラと同じようにレンズボードを交換するタイプである。
  • 本機はシャッターリボン切れ、シャッター幕ピンホールだらけの不動品である。初期のリトレックはシャッター幕の材質があまりよくないのでほとんどの個体で張替えが必要である。輸出専用機のオプティカはずいぶん改良されていたのであろう。シャッター幕も現在でもそのまま使えるものもある。
  • ちなみに武蔵野光機純正のテラゴン90mmというレンズはoptikaでは問題なく使えるが、リトレックだとミラーに干渉してしまう。ミラーが若干スィングバックするように設計変更したのだろうか。
  • 裏側の人工皮革をはがしてフィルムホルダの取り付け金具をはずす。
  • アパーチャーをはずすために、まずテレンプをはがしてネジをはずす。
  • アパーチャーのダイカストの一角がこの四角の板ではさまれているので、これもはずす。
  • アパーチャーのダイカストをはずした状態。両幕のテンションを抜いておく。
  • オリジナルのシャッター幕・リボン。劣化してボロボロである。
  • サイズは後幕が11.3x9.5cm(リボン20.2cm)、先幕が 15.2x9.5cm(リボン13cm)でありoptikaのものと若干異なる。これは幕やリボンの厚さによって調整する必要があるので参考値にすぎない。
  • なお、シャッター金具の両端はリベットでかしめられているがリューターなどで削ってはずせば再利用も可能である。
  • 金具自体があまり良い状態ではなかったので、今回は新たに作成することとした。
  • ホームセンターをパトロールしていて目に付いたのが「金鋸の歯」である。0.2mm程度と薄く強度も十分である。
  • 歯の部分はあっては困るのでやすりで削りとり、リューターで面取りをした後サンドペーパーで仕上げる。
  • 長さの調整は簡単である。ダイヤモンドやすりで少しキズをつけて曲げると簡単に折れる。
  • シャッター幕はヨドバシカメラで見つけた「遮光布」。本来は暗室の目張りをするためのものだろう。20cmx210cmの大きさで650円と非常に安い。ただし、切断面から糸くずが出やすいのでほつれないように接着剤などで処理しておくことをお勧めする。糸くずがシャッタードラムに巻き込まれるとやっかいだから。
  • 資金にゆとりのある人はAki-Asahi.com で正規のシャッター幕を購入することをおすすめする。
  • 「遮光布」と「金鋸の歯」で作成したシャッター幕。リボンはAki-Asahi.com で購入したものであるが、薄くて伸びも少なくおすすめできる。 手術用止血リボンも使用可能であるがかなり厚いのでリボンはかなり短くしないといけない。
  • 巻き上げ軸をはずして洗浄。
  • 同様にスプリングの入ったシャッタードラムもはずしたいところなのだが今までのところはずし方がわからない。軸を半分抜くことはできるので注油には問題ない。
  • 張替え終了。シャッター幕の位置は右側のギアのかみ合わせを変えることで調整できるのでライカ系の幕交換よりはずいぶん簡単である。
  • シャッタースピード調整は必ずアパーチャーを取り付けた後に行うこと。摩擦のため幕速が多少遅くなるようなのだ。もちろん可動部に少量を注油をおこなってスムーズに動くように調整しておく。むやみに幕テンションを上げるのは厳禁である。
  • 調整後、数日置いて再度調整することが必要。なぜならば幕もリボンもわずかながら伸びるのであるから。
  • この個体にはラーダ(RADA)の6x9判フィルムホルダを取り付けた。武蔵野光機純正ホルダとはフランジバックが異なるのでピントグラスの微調整が必要である。
  • Musashino Koki, Luminant 1:3.5 F=10.5cm。純正の標準レンズである。カラーだと色収差が少し気になるがモノクロだと文句なしの優秀レンズである。
  • この他に世田谷光機のセコールやシュナイダーのクセナーなどがラインアップされていた。またいろいろなレンズをリトレック用のレンズボードに取り付けるサービスも行われていたようである。
  • このカメラは主として営業写真館で用いられていたらしい。このカメラといっしょに手に入れたFUJINAR 1:4.5 f=18cmはフォクトレンダーのヘリアーを意識して作られたようなポートレート専用レンズであった。
  • リトレックはレストアすれば現在でも十分実用的に使うことができる。見かけたらぜひ連れて帰って、作品作りに使ってあげよう。