Franke & Heidecke : ローライマジックII(Rollei Magic II)のレストア

1962年発売。世界初の自動露出機構を内蔵した画期的な二眼レフ・ローライマジックにマニュアルシャッターを追加した機種。またまた浜松のお大尽様から修理の依頼があった。これは現在オーナの元で元気にしているらしい。

今までに7台のローライマジックI・IIを修理したが、AE機構の複雑な動作を理解するまでが大変だった。レストアの難易度は超ウルトラCなので見識のある人にはローライマジックの修理にけっして手をださないようにお願いしたい(笑)

  • 2004年4月21日
  • 2005年2月8日追加

 

見かけは初代ローライマジックとほぼ同じである。1/60以下のがバルブになるため分解修理を行う。

初代との違いはココ。マニュアルシャッターの設定のために仕掛けがややこしくなっている。どの位置ではずしたかを記録しておく方がいい。組みなおしが面倒なので。

初代を同じ構図。ひ弱そうなアームで上下のレンズが連動する。

この上にある小さなアームは露出計のギアと連動している。ローライ純正のバヨネットフィルタを付けた場合、回転することでプラス側への露出補正が可能になるのだ。

ヘリコイドと二群目のレンズが一体となっている。無理にまわすとヘリコイドが変形するので注意。

写真を撮り忘れたけど、裏側の仕掛けは初代と違うがAEの連結アームは同じである。

シャッターの内部構造は大幅に合理化されている。初代のシャッターはトラブルが多かったのだろう。この個体は稼動部への注油のみで無事復活した。

シャッター内部の拡大図はここ

2005年2月8日追加
 

これは3台目のローライマジックII。全部修理に持ち込まれたもので自分では一台も持っていないのである(号泣)

初代マジックと比べるとこの二階建てになったギアと被写界深度目盛りがことなる。はめ込みが少々やっかいなのである。

真ん中の切れ込みがシャッタースピードダイアルを動かす噛み合わせで、下の二つの切れ込みは絞りを動かすものである。

この他、テイクレンズ外周に組み込まれた露出補正ダイアルとの噛み合わせるピンもあるので結構面倒なのだ。

これは被写界深度目盛りを動かす仕掛け。微妙なRで目盛りを動かす絶妙な細工である。

(A)露出計アームの引き出し量に応じて(B)絞りの開き加減を制御する。これらがスムーズに動かないとAEは作動しない。

(C)はシャッターチャージの方向。

シャッターチャージ・リリースを行うしゃもじ型カム。ここが粘るとAE不良の原因となる。全部取り外してベンジン洗浄・注油を行う必要がある。矢印はなぜか逆ネジなので注意!!!
(A)がAE時に露出計の振れをガバナに伝えるカム。軽く動くことをチェック。この個体は固着していた。(B)は絞りの開閉を行うカム。絞りはごく弱いバネでテンションがかかっているだけなのでとにかく軽く動くことが重要。

(A)のカムを取り外して洗浄・注油。カムの中ほどにある小さなネジは偏心ネジになっていて露出補正が可能である。

右の丸い真鍮製の部品がスローガバナである。

ガバナを制御するリング。ここも軽く回転する必要がある。Cリングで固定されているだけなのではずして洗浄する。周囲が毛羽立っているとカムがスムーズに動かないのでAE不良の原因になる(メータが振れてもシャッタースピードが上がらない、メータの針がフリーにならずに動かない、etc)
  • (A)が上のリングと連動するカムで(B)のガバナを制御する。この個体はこのカム・ガバナがシャッターの上蓋と干渉していたので、上蓋の方をルーターで削ってある。
  • セレン式露出計と機械式プログラムシャッターの微妙なバランスの上で動作するAEなので各部分がスムーズに動くように調整を行うことが重要である。
  • そろらくメンテナンスなしでまともに稼動するローライマジックIIはほとんど存在しないだろう。しかし機械的にはがっちり作られているので整備すれば復旧可能な個体が多いはずだ。

<警告>

ローライマジック・ローライマジックIIの修理は非常に難しいのでそれなりに経験がある人以外は分解してはならない。きちんとした技術を持ったプロにおまかせすることをおすすめする。自分はたいした経験はない素人なのであることは秘密(笑)

<付記>

 

ピント調整について。

ローライフレックス全般に言えることであるが、フィルム送りがトンネル式になっているためフィルムガイドレールにピントグラスを密着させてピント調整を行った場合は必ず前ピン(開放最短で2cmぐらい)になる。これはトンネルの隙間が大きすぎるためである。このローライマジックのトンネル幅は実測で0.5mmあった。ガイドレールとピントグラスの間に0.1-2mmのテープを貼ってピント調整を行うと良いと思う。厳密に言うとフィルムベースと巻紙の厚さも関係してくる。

フィルムの平面性を重視するのなら圧板に0.2mmぐらいの金属板を貼り付けるのがいいかもしれない。いずれにしても実写で微調整を行う必要があるのだ。

ピントは実写で決めるのが良いのだが面倒な人は

  1. ピングラでジャストに調整した後5mmぐらい前群レンズを右回りに回転させる、
  2. ピングラとガイドレールの間に120フィルムの巻紙を2枚重ねたもの(約0.25mm)をはさんでジャストにピント調整する、

という方法でかなりの精度が出る。くれぐれも実写で確認のこと。自分の常用フィルムで合わせておくほうがいい。

不幸にしてマジックIIのエンブレムを紛失してしまった人はここに600dpiのスキャン画像があるのでニセエンブレムを作ろう。

カラーレーザープリンタで出力したものをラミネートし切り取る。