Franke & Heidecke: ローライマジック(Rollei Magic)のレストア

  • 1960年に発売された自動露出機構を内蔵した画期的な二眼レフ。残念ながらマニュアルシャッターは装備されていないのでAEが不調だと置物になってしまう。浜松のお大尽様から修理の依頼があった。前玉回転式だが素晴らしい写りで、そのデメリットはまったく感じられない。
  • 2004年3月10 日
  • 2004年6月24 日追加
  • 2004年11月24 日追加
  • 2005年2月19日追

 

ゴッセンのセレン式露出計とプロントマット-Sシャッターが連動してプログラムAEを実現した。

複雑な機構のため完動品は少ないと思うな。ローライの日本国内での代理店駒村商会もローライマジックは修理不能とアナウンスしている。

フロントカバーはネジ4本であっさりはずれる。

ピント調整は前玉回転式で、この細いアームで連動するのである。曲がっているのは絞りノブをかわすため。

上部にみえるのがゴッセンのセレン式露出計。くわえ込み式でアームを押し出すことでシャッターに光量を伝える。完璧なまでにブロック化されている。

このギアを回転することでピントを調整する。

このシャッターはプログラムAE、バルブ、フラッシュ用の固定シャッタースピード(1/30sec)の3つのモードをもっている。シャッターの拡大図はここにある。ちなみにローライマジックIIのシャッターとは構造が全然違う。

オートにしても矢印のカムがゆっくりと動き途中でとまってしまう。シャッターは開くものの閉じない。これは注油しても全く改善がない。

このピンがオートモードを固定する。ボディ右側面にあるボタンを押しながら絞りダイアルを回転することで3つのモードを切り替えることができる。
問題の部分の周辺のカムを取り外してみるが事態は変わらない。
レンズボードをはずす。ローライの他機種とはまったく違った構造である。繰り出し機構がないので極めてシンプル。
先ほどのカムの裏側がこれ。複雑怪奇なギア群と連動するのであった。
ギアを一枚はずすとこうなる。

例のカムをよくみるとスプリングがはずれて一回転以上ゆるんでいた。十分なテンションが加わっていないので回らないである。

このカムをはずさないとスプリングはかけられないが、実は裏側のギアとつながっているので上に引き上げるだけでは抜けないのである。

スナップリングで固定されているギアをはずすとやっと抜けた。
こういうスプリングである。グルグル巻いてテンションを強くした状態で組み込む。

これがゴッセンのセレン式露出計からの情報を伝えるカム。回転するようにスプリングがかかっているはずなのだが見つからない。ハンダ付けしたあとがあるのでなんらかの手が入っている。

後日、別のマジックを分解してみたところ、やはりここにはコイルスプリングが巻きつけられていることを確認した。

上のカムの回転がこの階段状ギアに伝わってプログラムAEを実現しているのである。

このシャッターが外周は回転するしギアの連結はあちこちにあるし、動作を理解するのに手間取る。少なくても今までに分解したどんなシャッターより複雑な構造である。

シャッターの内部にスプリングを取り付けるのは難しそうなので、外側のピンを引っぱりあげることにした。わははは、インチキな仕掛けだな。テンションはわずかでよいのでこれでも大丈夫だろう。
ピント調整リング。切り欠きの部分にピンがあったはずだが脱落している。真鍮板を小さく切って瞬間接着剤で貼り付けた。あまり力が加わらない場所なのでOKだろう。

矢印のカムがこの状態でバルブになる。右に少し回転すると普通のプログラムシャッターになる。

組み上げて絞りダイアルを何度か動かすと、このカムがシャッター外周に乗り上げてスタックしてしまう現象が頻発。どうやらアソビが多すぎるようである。少し下側に曲げるとOKなのだが、こうするとバルブがうまく働かないようである。今回はバルブモードはあきらめることにした。

念のためもう一度開けてみたらネジの締め付けが甘かっただけだった。バルブも問題なく復旧。ローライの技術者さん、疑ってごめんね。

このボタンを押して絞りダイアルを回すとモードが切り替わるのである。

普通はA、すなわちプログラムAEで使用するのがこのカメラの持ち味を生かすことになる。驚くべきことにゴッセンの露出計まかせで撮ったネガはどれもほぼ適正露光であった。

レチナIIIcに内蔵されたゴッセンの露出計もほぼ正確なEV値を叩き出すのでびっくりしたことがある。ゴッセンのセレンは経年変化に強いのであろうか?

巻き上げがギクシャクするので側板を開けてみた。

ローライフレックスに比べると非常にシンプルである。カウンタはセミ判用も準備されていた。巻き上げクランクのギアが他のローライとは異なる。

はげしいグリスの劣化である。
このような凸凹構造なので巻き上げの感触はあまりよくないのである。ベンジン浴後グリスアップして組み上げた。

4台目のローライマジック。シャッターは完調、露出計もOKだったがくわえ込みAEがシャッター側に伝わらない。

ゴッセンのセレン式メータはちゃんと動いている。これはメータの底部。ここがテイクレンズ周囲にある露出補正ダイアルと連動する。

Bがメータをくわえ込みAが下がるころでシャッターにEV値を伝える。ABの金具が擦れ合ってスムーズに動いていなかった。少量注油してOKとなる。実はここだけではない。露出計の振れを伝達する経路すべてがスムーズに動く必要があるので追っかけて行くと結局シャッター内部までバラバラにする必要があったりするのだ。

ところで、ゴッセンの露出計はよほど良いセレンを使っているのであろう。全く劣化は感じられなかった。

わわわっ!!私は何屋さんなんだろう(笑)

こう言ってはなんだけど、ローライマジックの修理は非常に難しいので普通の人は手を出さないことをおすすめする。とくにシャッターの動作はマジックIIのものより相当複雑怪奇である。

不幸にしてネームプレートを紛失した人はこれ横幅50mmでプリントするべし。