キャノン:キャノネットQL19の分解・レストア

 

たかさき もとひろ:2001年3月14日

作例

これも、もらったカメラです。

同じキャノネットでもGIIIよりはるかに巨大なカメラです。

症状は

  • シャッター不動(固着)
  • 絞り固着
  • Cdsの配線の断線
  • レンズのカビ

です。

軍艦を開けるのは簡単です。ただし、巻き戻しレバーのところにはライカM3のようにカニ目がありませんので、ゴムで押さえて回します。

露出計の連動部はごらんのように見事な造りです。メータの上に半固定抵抗がついていますので、LR44(1.5V)と水銀電池(1.3V)との電圧差を調節可能と思われます。

 

外皮をはがしてネジを4本はずすとレンズボードがごそっとはずれます。

Cdsの配線は、左上にある赤い線が半田付けされた接点と、レンズボード側のラグ板が接触する構造です。当然経年変化が起こりやすくなります。この個体も接触不良を引き起こしていました。なお、グランド側はボディに直接落とされています。

図体がでかいので分解は楽です。

シャッターをあけてみました。右下のチャージ部にベンジンをすこしかけるとゆっくりとシャッターが動き始めました。

シャッターとシャッター羽根の固着が原因です。

 

レンズボードの裏側。

後玉と内面反射防止のフード?のようなものをはずした状態です。絞りは固着して全くうごきません。

 

ここまでバラバラに分解しました。

なにしろ大柄なカメラなので分解は簡単です。

 

ベンジンを含ませた綿棒でシャッター羽根を洗浄してみましたが、一時的に改善するだけです。

かくなる上は奥の手、前・後玉をはずした状態で、後ろからベンジンを流し込みます。

これで、シャッター・絞りの固着は解消しました。こうするとシャッターの動きに必要な油も全部とれてしまいます。あとで少量の注油を行う必要があります。

ヘリコイドにベンジンをかけてしまうと前に油が流れ込んで面倒なことになってしまいます。

あとは組み上げるだけです。

それにしても、なんとでかいカメラでしょう。隣はニコンF5+18-35mm,F3.5-4.5、上はオリンパスペンDです。

 

 

このカメラは安くジャンクで入手可能です。

メカニカルカメラの標準的な構造をしていますので、分解・レストアの練習に絶好ですね。

キャノンカメラミュージアム によると
  • 型式 35mmレンズシャッター式距離計連動・シャッタースピード優先式EEカメラ
  • 画面サイズ 24×36mm
  • 標準レンズ SE45mm F1.9 (4群5枚構成)
  • シャッター コパルSV、1/500〜1秒、B、セルフタイマー内蔵、シンクロ接点はM、X切り替え式ドイツ型ソケット
  • ファインダー 二重像合致式連動距離計と逆ガリレオ式ビューファインダーを光路内に一体化した一眼式、ブライトフレーム式パララックス自動補正トリミング・マークファインダー、倍率0.7倍、視野上部にF1.9〜F16までの絞り目盛りとメーター指針のある適正露出窓/連動範囲外警告
  • 露出計とEE機構 CdS式、クシ歯制御式シャッタースピード優先式EE、測光連動範囲=EV2.5〜19(ISO100)、測光連動範囲=EV2.5〜19(ISO 100)、フィルム感度使用域=ISO 25〜400、AUTO解除によるマニュアル露出可能
  • 使用電源 1.3VのHD型水銀電池1個
  • フィルム装填・給送 裏蓋開閉フィルム位置合わせ、裏蓋閉じでレバー巻き上げを行うクイックローディング(QL機構)システ ム、上部レバー120度回転1作動式
  • フィルムカウンター 裏蓋開放に連動して自動復帰する順算式
  • フィルム巻き戻し 上部回転クランク式
  • 大きさと質量 140×79×33mm、800g

ということだそうです。