ニコン(Nikon):ニコマートFTN(Nikomat FTN)のレストア

昭和42(1967)年に発売されたニコマート FTN。

20数年前、早稲田大学に通っていた私の愛機はこのニコマート(黒)とニコンF2の二台だった。スキーにはまっていた私はカメラ一式を質草にしてしまい、このニコマートと135mm F2.8を流してしまった。ずっとそのことがトラウマになっていて安いジャンクの黒のFTNを探していたのだ。 ちなみにかつて使っていたFTNは池袋東口の中古屋で2万円で買った記憶がある。

2004年12月30日

 

ヤフオクで手に入れた見栄えの良いFTN。露出計不動(電池蓋固着)、ミラーアップが遅かったり途中で止まったりする堂々のジャンクである。

コレコレ!シャッタースピードダイアルがここにあるのが慣れ親しんだニコマートなのだ。
露出計窓の上にNとあるのでFTNだと思う。そうでなくったっていい。これを使っていたんだから。
飾りネジをゴムで回すとカニ目があらわれるので、後は普通に分解していけばよい。
これが「ニコンのガチャガチャ」の仕掛け。

トップカバーをはずす。シンクロ接点への配線をはずしておこう。

加工精度は抜群。この頃のニコンは廉価版のニコマートであっても手抜きは一切ない。

電池蓋は液漏れで固着しており、電池ボックスも激しく腐食していた。
Cdsの載った基板をはずす。モルトはパサパサに劣化していた。
これでミラーボックスをはずす準備ができた。

前板のマイナスネジ5本をはずすとこうなる。

ダイカストの鋳造精度でフランジバックの精度が決まる。ここに微調整用のワッシャが入っているカメラがあるが、ニコマートには一切入っていない。外からはまったく見えないところであるが、線材も良質で劣化はなくハンダ付けも見事である。

本体とミラーボックスの配線はこの二本。絶縁チューブをはずしてハンダ付けをはずしておく。

シャッターユニットはコパルスクエアS、縦走りメタルフォーカルプーンシャッター((B、1-1/1000sec)。

抵抗はメータの感度を調整するためのもので、カラーコードが赤・緑・赤だから2.5KΩ。この個体はメータの感度が落ちているのか、Cdsの劣化なのか、抵抗をはずして丁度ぐらいになった。

アイピースの両横にCdsが取り付けられている。回路は2個Cdsを直列、2本の抵抗を直列つないだものを並列に接続しているだけである。
電池ボックスはボロボロ。端子間もショートしていたので再利用することはあきらめた。

ミラーボックス。クイックリターンの仕掛けである。

ニコマートFTNは頑丈なカメラとの定評があったが、分解してみてその理由がよくわかった。ダイカストやそれぞれの部品が非常にしっかり作ってあるのである。そのために重いのは仕方がない。

きちんとメンテナンスすることでほとんど永遠の寿命があるカメラである。機械式ニコンを不燃物の日にゴミとして出すやつは地獄に落ちるべきである。←F50あたりなら許されるであろう(笑)

ミラーボックス下部。このISO切り替えノブが重いのは昔使っていたときから同じ。
右上にシャッタースピードをファインダ内に表示する仕掛けが見える。糸を使っているので切れるとやっかい、さわらないのが大人の見識である。
コパルスクエアSの全貌。この時代はプラ部品はほとんど使われていない。およそ故障しそうにないすぐれたシャッターである。少量の注油だけで整備はOK。
ペンタプリズムの固定もやり過ぎなぐらいしっかりとしている。金属板+ゴム板+金属板で押さえてある。OM-1のようにモルトやビニールテープは一切使われていないので、経年変化にはきわめて強いのである。この個体のプリズムも完璧な状態であった。
スクリーンを掃除する。左に追針式露出計の針が見える。
電池ボックスはいまさら水銀電池用のものを作ってもしょうがないのでLR44用に作成した。材料はプラ板とゴム板、電極は銅版。オリジナルではプラス側もしっかり電線を引っ張ってあったが、作るのがたいへんなのでボールペンのバネを電池蓋にハンダ付けしてボディアースとした。

LR44でOKなのでこっちの方が使いやすい。

 

露出計も問題なく動き始めた。
こまかい調整はこの抵抗を半固定抵抗に置き換えてから追い込んでいく必要がある。大きな画像はここ

はい、復活!

もう一度書いておくが「機械式ニコンを不燃物の日にゴミとして出すやつは地獄に落ちるべきである。」 

オーバーホール次第で何十年でも使えるカメラなのだから。