メオプタ(Meopta): フレクサレットVII(Flexaret 7) のレストア

メオプタ社製フレクサレットの最終機である。1966-71年に作られたこのカメラはボディとプレスターシャッターの相性の問題があり完動品は少ないし修理は非常に難しい。シャッターユニットの取り付け部が0.5mm回転しただけでもチャージ不能となる仕様なので、賢明なあなたは手をだすべきではない。「フレクサレットVIIは買わない、バラさない、使わない」ことを強くおすすめする。鑑賞用としてはこの限りではない。

フレクサレットについて碌な情報がないとお嘆きのあなた、中山慶太氏の素敵なエッセイを読むだけで十分でしょう。 MeoptaのCamera Historyを参考すればわかりやすいよね。

2003年8月2日

 

ebayで完動品として落札したフレクサレット7が持ち込まれた。シャッター切れずの完全ジャンク品である。

前板をはずす方法はフレクサレット6と同様。
距離目盛り・レバー、四隅のネジ、レンズブロックをはずさないと前板ははずれない。
前板のダイカストが曲がって折れていた。落下品なのだろうか。ここがシャッター駆動用リングに干渉していた。
ペンタコン・プレスターRVSシャッター。LV方式のシャッターである。
前から分解。
卵型の板はクリック感を出す部品。
どんどんバラす。

コンパーに似ているようでも動作は全然違う。

シャッターチャージの時、シャッター羽根は一度全開するが後ろ側にある絞りが閉じているので露光しない。シャッターが完全にチャージすると絞りは規定の開口になる。そしてシャッターが閉じると絞りも閉じる。

今までに見たことがない動作をする。

シャッター・絞りに油が回っているので分解が必要である。後ろのカニ目をはずす。

後ろからはずしたため羽根がバラバラになってしまった。

前から抜くべきである。

バラバラ。

とりあえず羽根を全部はずしてクリーニングする。
矢印が絞りの開口の大きさを制御する部分である。
微妙に曲率が違うシボリ羽根。
後ろから見た羽根の組み合わせを元に試行錯誤を繰り返す。
奮闘の末、このように組み込んだ。絞り羽根が乗っている円盤が回転することで絞りを変化させる仕組み。

シャッター羽根がまた変わっている。二枚の円板に挟まれたブロックになっている。羽根の形状はブーメランのようである。はめ殺しなのでこれ以上分解することはできない。

このままベンジン浴をする。この時、ピンセットで羽根を回転させてやるとキレイにクリーニングできる。

シャッターが乗るリングもクリーニング。

これをブロックで洗浄しても良い。

巻き上げが645判の進みしかしないので側板をはずす。
フィルムローラーの動きを受けるギアは645判と66判の二枚ギアになっている。この状態で645判。
これを押し込むと66判になる。
こういうギアである。

本来は外からピンでこのギアを押し込む仕掛なのであるが、このギアの上に乗っていたと思われる部品が欠損していたため645判に固定されてしまっていたのである。

マスクもないので66判専用機にすることに。ボールペンのバネがちょうど良さそうである。

短く切って側板の突起にはめ込む。

ペンタコンシャッターは遊びが非常に少ないためにシャッターチャージ・レリーズカムとタイミングを合わせるのが大変である。

左がレリーズ用、右がチャージ用カムである。レリーズ用カムがシャッターのレリーズを飛び越してしまうことがあったのでラジオペンチでわずかに修正した。この整形は非常に微妙である。

なお割れたダイカストの下にはスペーサを入れて調整してある。叩いて修正しようとした跡がくっきりと見えるが、深追いすると割れるのは必至なのでさわらない。

フレクサレットの最終機。ちょうど「プラハの春」の時代に作られたカメラである。時代を反映してか造りは相当大ざっぱである。おそらくまともに動く個体はほとんどないのであろう。

ペンタコンシャッター自体は非常に良い造りなのであるが、ボディとのバランスが悪い。

チェコスロヴァキアの生んだ銘レンズであるベラー。

この写りはローライコードのクセナーと全く互角である。

これが66判、645判を切り替えるピン。機械的に非常にヤワであり、この個体ではすでに折れて接着剤で貼り付けられていた。
これはヘリコイドの繰り出すときクリックを出すスイッチ。
これは多重露光ノブ。

フレクサレットも最終型になると脆弱なカメラになってしまったのである。